2011年01月10日

長崎の非常、V・ファーレンの無常⑤

さて、いよいよ最終回。



昇格断念が本当に怖いのは時間が経ってからだ。断念直後はショックが大きい一方、現実感が薄かったり、希望的観測がまだあったりする。だが、時間は気力を奪い希望的観測を打ち砕く。不満は大きく、夢は小さくなっていく。



昇格断念後、現場は4位に入りで状況打開を狙ったが、それはとても厳しいものだった。精神力とチーム総合力の問われる終盤にモチベーションが揺らぎ、来季方針も判らないチーム状態。上位4チームとの成績は1勝7敗。正直上位4チームと1ランク差があったと思う。それでも長崎は最後まで崩れ落ちず、踏ん張りを見せた。



これは佐野達の手腕と、選手同士の強力な一体感が支えたと言えるだろう。
今年のチームは選手同士が驚く程よくまとまっていた。プライベートでの仲の良さが全て良い方向でピッチに出ていた。
そして佐野達の手腕であるが、反発を持つ選手も居たし、起用もこだわりが強すぎる面があり、問題がなかった訳ではない。だが心酔する選手もいたし、何より最後までブレなかった事で一定の求心力を保ち続けた。願わくば今後、ブレない事が頑なにならないように、こだわりが固執にならないようになってもらいたい。大きな影響力を持つだけに、暴走してしまえば止めるのが大変なのだから・・。



一方で、フロントは当然にシーズンが終る前から来季の事は準備を行っていた。
そしてチーム変革の為に大量の退団者を出した。本来はクラブが決めた変革方針の為の決断であり、それが正解か不正解か誰にも判らない以上・・どうこう言う事ではない。だがその手際が今回は悪く多くの非難と傷を残した。



サッカー選手、特にJリーガー以外や、Jリーガーでも実績のない選手は周囲が思う以上に給与は安い。昔、某J2のルーキーと話した時に年俸が70万と聞いてビビった事がある。そんな給与で彼らがプレイをするのは何故か?フットボールが好きだからだし、今は給与が少なくとも活躍次第で上がっていくはずだからだ。



実際、V・V長崎の育成枠はその考え方だ。ウチで頑張ってみないか?結果を出せば上がっていくし、活躍次第で他チームからの話もあるぞ・・という事だ。そんな選手達からすれば・・出場時間が多かったり、短くでも良い活躍をしていたり、育成枠という事で厳しい条件を受け入れていた選手からすれば・・ロクな説明もない突然の解雇は納得がいかなかったと思う。



トドメにやり方がまた不味かった。選手を部屋に呼んで封筒を手渡して「ご苦労様」で終り。あとは何の説明もなく封筒の中に「契約しません」の手紙1枚。これがJだとか、それなりの待遇のクラブならばありだったかもしれない。
だが、このクラブは色んな意味でまだ「情」で成り立っている。



V・V長崎より有名なジャパネットが胸スポンサーをやるのはビジネスか?利益率の悪いV・スナを東洋軒さんが出し続けるのはビジネスか? ビジネスだけではないからこそ、県も協力している筈だ。これからは情に頼りませんと言うのなら「選手だけ」から始めなくて良かった。成績不振で解雇された監督が強化部に就いて、2年連続で昇格断念した事はビジネスならどう判断するのか?



 クラブはマズイやり方で結果的に選手にだけ責任をとらせたような格好になってしまった。そんな気持ちはなかったはずなのに・・。



さて、そろそろのこの話題を〆る。
今回の出来事はクラブ体制の未成熟というのが一番大きいが、もう一つ露呈したのが「長崎語」をクラブの誰もが語らなかった事だ。クラブにはそれぞれ独自の雰囲気・伝統・歴史がある。それはそのクラブだけで通じる言語のようなものでV・V長崎では長崎語と言い換える事が出来る。



その長崎語と新しく外から来た言葉を組み合わせて行く事が進化だと思う。長崎語を主張し、考えていれば解雇選手への対応やセレモニー等は別の展開になったのろう。退団した選手、残った選手、ファン、そしてクラブ・・誰一人得をしない失態を最後の最後にやって2010年は終った。



とても悲しいシーズンの終りで大きな傷を背負ってしまった。
だが、どれほど傷を負おうとも、どれほど失敗しようとも2011年はやってきて、新しいシーズンは始まる。新しい選手達も長崎の街へやってくる。そして、これだけ色んな事があってもまだまだV・ファーレン長崎を好きな人間が沢山いる。失敗は無くなる事はないけれど取り返す事が出来る。傷は消えないかもしれないけれど癒す事が出来る。



俺達とV・VAREN長崎の7年目が始まる。



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Posted by 藤原 裕久(KLM)  at 01:46 │Comments(2)V・V長崎

この記事へのコメント

「社長・小嶺忠敏」氏について。
長崎サッカーにおける全国区の顔であり、絶大なる影響力と求心力を持った人…。
私の勝手な推察でした。
最終戦後のセレモニーでの社長の挨拶時、私のまわりの何人かがブーイングをしました。真剣な表情でした。解るような、でももう少し、寛大な気持ちであってもいいような…複雑な気持ちで私は帰宅しました。
小嶺氏について、話せるだけで結構ですので、よろしくお願いします。
Posted by 新参者 at 2011年01月10日 09:35

これまでに負ってきた数多くの傷、そして、これから負っていくだろう傷を糧に、チームやサポーターら数多くの人たちが成長していけるのか。それとも、その傷に目をつぶり、見て見ぬ振りをし続けて行くのか。

……………今、誰もが、その境界に立っているのかもしれない。
Posted by at 2011年01月10日 14:07
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