2015年 J2第18節 長崎vs.磐田 ~~実を取るか?実はなるか?~

藤原 裕久(KLM)

2015年06月15日 22:22

 「先制ゴールを奪えましたが、攻守共に主導権を握ることができなかった。長崎の戦い方が徹底していたので、ボールをつなげず、連動してボールを奪いに行けない時間が80分くらい続いてしまった(ジュビロ磐田 名波監督)」。この言葉が試合内容の大半を示していると思う。


 前半4分、ゴール斜め左の約30m弱の場所からのゴールに向かってくるFKを、GK大久保がこぼし、そのまま2試合連続得点中の櫻内に決められ失点。第12節の出場以来、無失点こそ無いが大きなミスが無かった大久保にとって痛恨のプレーと言って良い。この後は、試合を通じてビッグセーブで決定機を防ぎ、失点の影響を最小限に留めたが、GKは前に出た以上は絶対にボールを止めなければいけない。本人が最も悔しいことだろう。

 この日の長崎はシステムを変更し、2列目の小林を黒木がケア。磐田のベースである宮崎、上田、小林のトライアングルを抑えに行く。攻撃では攻め残るアダイウトンや、前に上がってきたSBの裏をついてペースを掴んでいく。相手の裏を突く攻めは効果的で、磐田は64分にはアダイウトンを、82分には小林が交代。アダイウトンの出場時間64分で交代というのは彼のJリーグ出場時間で最短だ。更に長崎は、前半から何度か決定機を作っており、シュートがバーを叩くシーンも多かった。運不運で勝負事を語りたくはないが、それに左右された面は少なくない。

 「普段のミーティングでは試合のキーワードを話すんですが、今日は、選手に、君たちでキーワードを作りなさいと言いました。その中で、何が大事かということを把握しながら、選手たちはよくプレーしたと思います
戦術的にもシステムを変えて相手にプレッシャーを与えることができたと思います。柔軟さをみせてくれた
「今日の試合は、リーグ戦を戦う上で我々にとって得るものが大きい試合だった
高木監督のコメントと同じように感じたサポーターも多かったのではないだろうか?

「磐田相手でもあれだけやれたことは、今後を戦う自信になるのでは?」
との問いに選手たちは「それだけやれたからこそ、勝てなくて悔しい」と答えた。代表戦で主力クラスが2人欠場しても、しっかりと戦い、試合を終えて選手たちが次々に「また明日、練習があるんで、そこで高めていくしかない」と口にする。J2で負けないチームからJ1昇格を本気で取りにいくチームへ・・まだトレーニングも試合も続く。

 名誉や名声などうわべの体裁よりも、実質的な利益を得ることを選ぶほうが、賢明であるということを「名を捨てて実を取る」と言う。この試合で得た経験が実となるか・・その実が力へと変わるかどうか、はこれから次第だ。だが、この実が力になった時、それは実力と呼ばれるはずだ。




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